2017.06.21
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2017.06.21

【外食部】第1回外食部会ご報告〜坂巻さんから”注ぎ”の極意

2017年6月10日(土)第1回外食部会@札幌。
今回は第一部で開催したMaltheads店主 坂巻さんによる、ビールをおいしく飲みほすまでの”注ぎの極意”をお伝えしていきます。
 
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Maltheadsについてのご紹介は報告1回目(https://100beer.talk-it.jp/blogs/44)をご覧いただくとして、ここでは坂巻さんからの"注ぎ"の極意をお伝えしようと思います。


第1回外食部会の準備に忙しい坂巻さん。
百人ビール・ラボ社でのランクは現在「係長」だそうです。
 

【乾杯のビール】


坂巻さんセレクト1杯目はもちろん「パーフェクトクラシック」。
ところでみなさんはなぜ「"パーフェクト"クラシック」と呼ばれるのかご存知ですか?
パーフェクトクラシックと普通のクラシック、実は中身は全く同じものなのです!
どうしたらパーフェクトと名乗れるお店になるかというと、サッポロビールさんに申請しすると、ミシュランの覆面審査員のような人が来店して、注ぎ方や管理の仕方、グラスの洗い方などチェック項目に沿って採点し、合格点をもらえれば晴れて「パーフェクトクラシック」と名乗れるのです。(たとえば、黒ラベルを出しているお店なら「パーフェクト黒ラベル」、ヱビスを出しているお店なら「パーフェクトヱビス」。審査内容は同じだそうです)
審査後にはスコアシートをもらえるそうですが、坂巻さん曰く内容は「グラスの壁面に汚れが原因の小泡が付いていないことだとか、ビールに余計な味がしないだとか、ごくごく普通のことです」だそうです。「それは、寿司職人が包丁を毎日研ぐようなもので、普通のメンテナンスをしていれば、美味しいものは普通に出せます。だって元のビールが美味しいんですから」
それにしても、中身が一緒で味が違ってくるというのは本当に面白いですね。


坂巻さんの選ぶ2杯目のビールは、8種類のビールの注ぎ分け。どんな違いが出るのか楽しみです☆
 

【1杯目:クラシック(樽)の1度注ぎ】


一度注ぎというのはスタンダードなビールの注ぎ方の一つなのですが、本当の「一度注ぎ」をするには「スイングカラン式(横にひねるもの)」で行うのが正しい方法だそうです。
モルトヘッズさんのサーバーはスイングカラン式ではないので、坂巻さんいわく「擬似的な一度注ぎ」ということでしたが、実践していただきました。
坂巻さんのこだわりは、メーカー推奨の「サーバーの口にグラスをぴったりくっつける」のではなく、少し離した上でビールをこぼすことを怖がらずに注ぐこと。こうすることで炭酸が少しだけ抜けて柔らかみが増すそうです。「『樽を開けてがばっと掬い取るようなイメージ』でグラスに注いでいます。そうすると、必然的にビールはこぼしながら注ぐことになります。お店によってはそれを『ロス』と考えるのは当然ですが、美味しさとロスとのバランスをそれぞれの条件内で見つけるのがいいのではないでしょうか」
ちなみに、この注ぎ方は味が柔らかくソフトになるのでオールモルトのビールにぴったりとのことでした。
 

【2杯目:ロング・ルート・エール(樽)の泡薄めの注ぎ方】


一般的によく言われる「よいビールの注ぎ方」の見本といえば、泡3:液7のビールと泡の比率ですよね。
しかし、坂巻さんいわく、「すべてのビールにおいてあの比率がよいわけではない」そうなのです。
実は2杯目に注いでいただいていたペールエールは泡は「入れない」お店もあるほど。
ちなみにMaltheadsでうすーく泡をいれているのは「提供する時にこぼれてしまう」からだそうです。
クラフトビールの盛んなアメリカでは「泡が多いとその分だけ損をしている」と思う人が多い文化だそうで(坂巻さんの見解?!です)こういう注ぎ方をするところが多いそうです。
ざっくりとした注ぎ分け方は
●いつものラガーは泡3:液7
●クラフトビールに多いエールは泡薄めで残りは液(泡1:液9)
これなら忘れず覚えていられそうですね♪
なお、Maltheadsさんは瓶のビールがメインという珍しいビアバー。樽のビールは「繋がない日もある」そうで、「繋いでない日に当たったらごめんなさい」とのことでした。
 

【3杯目:プランク・ヴァイツェンの注ぎ方】


樽の注ぎ方の話から次は瓶の注ぎ方の話へ・・・
瓶ビールの場合は”オリ”をどうするかが肝心(無ろ過ビールの場合)。ビアスタイルによって”オリ”を入れる、入れないでまったく味が変わるとのこと!
例えば、3杯目に選んでいただいたヴァイツェンやベルジャンホワイトのような、いわゆる「小麦ビール(白ビール)」と呼ばれるものは、瓶底の”オリ”を入れきらなければ味が完成しないビールということで、注ぎ終わりには瓶の中に残り僅かになった液体をくるくる回して、底に残った”オリ”を余すことなく注ぎることが重要だそうです。
これを見たお客さんに「あーくるくるして泡を立ててるんですね」という方もいらっしゃるそうですが、それは誤解。あくまでも”オリ”を「余すことなく」というのがポイントなんですね。
ちなみに、ヴァイツェンのグラスはくびれがあるって縦に長いのが特徴で、まっすぐに注ぎ入れると泡だらけになってしまいます。
注ぎ始めはグラスをほぼ真横に寝かせてそーーーーっと注ぎ入れるのがコツ!とのことでした。
 

【4杯目:トラピスト(オルヴァル)の注ぎ方】


続いてもまた”オリ”に関するビール。
トラピストビールのオルヴァルは、このボーリングのピンのようなフォルムが特徴的なのですが、このデザインは見た目だけではなく”オリ”をこのふくらみの部分で「止める」という機能的な役割も持つんだそうです。
”オリ”を止めるということは「入れない」ということではあるのですが、「飲んではいけない」のではなく、あくまでもそこは「お好みで」という選択肢を与えられているビールとのこと。
ベルギービールがメインのお店などではトラピストや修道院ビールの場合に小さな別のグラスに”オリ”部分を入れて添えて出すスタイルにしているところもあるそうです。
ちなみにオルヴァルというのは「黄金の谷」という意味。なので、”オリ”で濁すことのないようにそっと注ぎ入れ、美しい黄金色を完成させるのが正しい注ぎ方ということでした。
ビールの名前にもそんな意味があるなんて、ビックリです。
 

【5杯目:ノースアイランドIPA(オリあり)】【6杯目:ノースアイランドIPA(オリなし)】


手前の☆マーク入りグラスがノースアイランドIPA(オリ入り)。奥がオリなしで、オリ部分を小グラスに入れています。
引き続き”オリ”の話なのですが、今度は同じIPAのビールでの”オリ”あり/なしを飲み比べ。
実は坂巻さんご自身も最近この注ぎ分けを、茶坊主さん(ビールのあらゆることを広めるビアゼネラリストとして活動中の株式会社SOUJU代表の福島氏)に教えていただいたそうで、「世界が広がるのを感じた」そうです。
ほとんどの場合はオリまで注ぎきるため、ホップの苦みがしっかりと感じられます。一方で”オリ”なしの方はクリアな味わいが楽しめるため、苦みに抵抗感のあるクラフトビール初心者や「今日は少し軽めがいいな」という日にはピッタリとのこと。
また、”オリ”はいわゆる残留物なので、それが舌に当たることによって「丸い」とか「まろやか」といった表現をされることが多いそうです。
飲む人が何を求めているかで、こういった注ぎ分けをすることが出来たら、もっとIPAファンが増えるのでは?と坂巻さんは考えておられるそうです。

 

【7杯目:デュベルのトリプルホップ】


ラスト2杯は特徴的なグラスが多いことで有名なベルギービールの注ぎ方について。
まずはベルジャン・ゴールデンエール。カリフラワーやメレンゲのような白く固い泡が特徴のデュベルです。
「泡が命」のこのビールはグラスの底にわざと傷が付けてあり、常に細い泡がたつような仕組みになっているとのこと。
坂巻さんいわく、泡が大事だから泡5:液5でもいいくらいのビール、だそうです。
「ゴールデンエールというくらいなので、オリを入れずに透明感を出す注ぎ方が好ましいのかもしれないです。しかし、オリの方にこそ『悪魔』(デュヴェル)が潜んでいるので、このビールの注ぎ方はちょっと迷います」とのことでした。
今回は”オリ”を別のグラスに注いでいただきましたが、”オリ”あり/なしでも味が相当変わるそうです。
それもぜひ試してみたいですね!
 

【8杯目:グーズ・ブーン(ランビック)】


ラストは「酸っぱいビール」として知られ、少し敬遠されがちな「ランビック」。
日本で一般的に飲める「グーズ」という種類のランビックは2種類の違う糖分のビールを混ぜて瓶内発泡させる手法を取られており、これはシャンパンに影響を受けた手法なのだそうです。
なので、ビールの中でもグーズランビックはシャンパンのような味わいを楽しめるものなのです。
今回はシャンパングラスではなくワイングラスを使用していますが、このように口で丸みのあるグラスに注ぎ入れると香りや軽快さを更に堪能できるとのこと!
合わせる食べ物もまさにシャンパンに合うものをセレクト(例えばカマンベールなど)すると最高!なのだそう。
ビール=ピルスナー というイメージだと確かに好き嫌いがあるランビックですが、”オリ”なしで注いでシャンパンらしさを際立たせることによって、このビール独特の楽しみ方を堪能できるそうなので、飲まず嫌いだったみなさまはぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
 

【番外編:ファロランビック】

●ここで横山さんから「ファロランビックってありますか?」との質問が。

同じ「ランビック」でも、ファロランビックはお砂糖入りのランビックでブラウンシュガーで甘みを付けているもの。
写真のようなろ過して瓶詰めされているファロランビックしか日本では飲めませんが、本来はストレートランビックにブラウンシュガーを加えて飲むもの。コーヒーにお砂糖を入れる感覚で砂糖の小片をグラスに入れ、自分で砕きながら飲むのが「本物のファロ」との弁。「実際に飲んだことがありますが、味わいや丸みがぜんぜん違う」とのこと。
それにしても本当に何でもありますね、Maltheadsさん。


ということで、8杯のビールの注ぎ分け、グラス分け、”オリ”ありなし・・・・と飲み比べをしてきて、新しい発見もたくさんあった参加者のみなさまからは大きな拍手が。
坂巻さんは
「自分もビールの味とグラスの関係について考えが整理できてきたのはやっと最近。まだまだ普段はパイントグラスへ注ぐことも多いので、これからどんどんグラスの使い分けもしていきたい。ぜひ他の日本のビアバーにもパイントグラス一辺倒ではなく実践してもらって、「ビールはビール」と片付けられないそんなビール文化を作って行ければ!」
とおっしゃっていました。
 

 

【美味しいビールを飲むための秘訣】

日々の生活で楽しむために、「家で飲むビールを美味しくするコツ」をお聞きしました。

●缶ビールを買う時は、缶の底で「製造年月日」を確認!
 坂巻さんいわく「賞味期限を見る必要はありません。1カ月以内に『製造』されたものであれば、自分好みのメーカーでなくても買うべき!」とのこと。

●缶ビールは必ずグラスに注ぐ!
 「容器から直接飲まないのは鉄則。缶から直接とか瓶のラッパ飲みでは鼻を使えないので、鼻を詰まんで飲んでいるのと大差ありません」だそうです。

●飲む順番は軽いものから重いものへ!
 フランスのブリア=サヴァラン(美食家)の言葉でも「飲み物の順序は、最も弱いものから最も強く香りの高いものへ」「食べ物の順序は、最も実のあるものから最も軽いものへ」と記してあるそうです。

●「びあけん」にチャレンジしよう!
坂巻さんは日本ビール検定(びあけん)の1級に合格されています(なんと合格率5%!)。ぜひ受験してもらいたいと願っていらっしゃいました。「知識は感覚を変えてくれるものです。ビールの歴史や文化を知ることで、これまで気付かなかった味に気づくことができます。人に知識を自慢するためではなく、自分の感覚を磨くため(美味しさのため)に、「びあけん」はとってもおすすめです。3級を取るだけで、ぜんぜんビールの味わい方が変わりますよ」とおっしゃっていました。
 

【坂巻さんのこれからチャレンジしていきたいこと!】


「まず1つ目に、グラスをちゃんと揃えてスタイルごとの出し分けをしていきたい!
厚手のもの、薄手のもの、ステムのあるもの・・・くらいの出し分けはしたい」と、表明された坂巻さん。
ちなみに、軽いビールは軽いグラス・薄手のグラス、重いビールは重いグラス・厚手のグラスが良いそうです。
これなら家にあるグラスで試してみれそうですね♪
また2つ目のチャレンジとして「ビール(とウイスキー)に集中するあまり食べ物が極端に少ないお店になってしまいました(笑)。今後も料理を充実させることは設備的に難しいのですが、シンプルながらもビールと相性の良い食べ物を探求していきたいです」 ともおっしゃっていました。これからのMaltheadsも気になりますね!
 

【最後に・・・】

この日限りのスペシャルコースターと共にいい笑顔☆
坂巻さん、とてもためになるいいお話をたくさんありがとうございました!

そんな坂巻さんのお店はこちら・・・
Maltheads:https://maltheads.net/

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こちらの報告の感想については、外食部ミッション6にて受け付けております。
ぜひ感想などをお寄せいただければと思います。
外食部→→→https://100beer.talk-it.jp/projects/26/themes/148
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